「杉本博司 絶滅写真」展が、東京国立近代美術館で開催されているので行ってみました。

江之浦測候所で一般の人にも知られる杉本博司(すぎもと ひろし、1948年2月23日 ー )は、日本の写真家、現代美術作家、建築家、演出家です。
その活動範囲は広く、上記の他にも 書、陶芸、和歌、料理と多岐にわたっています。
本展では、そんな多才な杉本の芸術の原点とされる銀塩写真に焦点をあて、杉本の初期(1970 年代後半)から現在に至る銀塩写真約60点を展観しています。

本展は、第1章「時間・光・記憶」、第2章「観念の形」、第3章「絶滅写真」の3つの章、全13シリーズで構成され、初期代表作から近作まで、杉本博司の作品世界の展開を時系列に沿いつつたどっています。
第1章「時間・光・記憶」では、1970年代から80年代に着手され、杉本の評価を確立することになった〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉の3つのシリーズなどにより、作品世界の始まりを紹介しています。
〈ジオラマ〉シリーズ より
「どんな虚像でも、一度写真に撮ってしまえば、実像になるのだ」という杉本の考えに基き、アメリカ自然史博物館でジオラマ展示されている剥製などを、大型カメラで撮影したシリーズです。
本展では展示されていませんが、同シリーズの《シロクマ》という作品を観た時には、生きているシロクマを撮影したものだと、完全に騙されてしまいました。Photograph を「写真」と訳した日本人の思い込みが、写真を「真実を写すもの」という先入感から逃れさせないのです。
《ホモ・エルガスター》 1997年 ゼラチン・シルバー・プリント
〈劇場〉シリーズ より
1本の映画をはじめから終わりまでシャッターを開いたままにして撮影した写真です。1時間~2時間という映画の物語は凝縮され、真っ白に輝く四角い光へと還元されます。
この劇場は1987年まであった歴史的な映画館で、「サウンド・オブ・ミュージック」や「ラ・マンチャの男」が世界で初めて上映された場所でもあります。
U.A.リヴォリ、ニューヨーク州 1978年 ゼラチン・シルバー・プリント
〈海景〉シリーズ 展示風景
「原始人の見た風景を現代人も同じように見ることは可能か」という自ら立てた問いに対して、1980年の第一作以降今日に至るまで、杉本は世界各地の海で、同じ構図で水平線を撮影し続けてきました。
第2章「観念の形」では、人間の知性や想像力がつくりだしたさまざまな「かたち」を主題とした〈観念の形〉〈スタイアライズド・スカルプチャー〉など90年代末から展開されたシリーズにより、作品世界が拡張・深化していくプロセスを紹介しています。
〈建築〉シリーズ 展示風景
「私は大型カメラを使い、焦点を暈すことによって、建造物が建つ前の建築家の脳内ビジョンが再現できるのではと考えた」という杉本の言葉のように、建築家の想像力が焦点の合わないイメージの中に浮かび上がります。
〈スタイアライズド・スカルプチャー〉シリーズ 展示風景
このシリーズでは、イブ・サンローラン、クリスチャン・ディオール、三宅一生など、時代を画したファッションデザイナーたちの作品を「人体とそれを包む人工皮膚を近代彫刻として見る」という視点からとらえ、モダニズムの検証を試みています。
〈概念の形〉シリーズ より
幾何学を三次元の模型にして視覚的に把握しやすくした、石膏製の数理模型を撮影したシリーズです。
《観念の形 0003》 2004年 ゼラチン・シルバー・プリント
第3章「絶滅写真」では、終焉を迎えつつある銀塩写真というメディアの始原にさかのぼる〈前写真、時間記録装置〉〈フォトジェニック・ドローイング〉から、近作〈Opticks〉まで、6つのシリーズにより、杉本が予見する“絶滅”をめぐるヴィジョンの行方を探ります。
〈肖像〉シリーズ より
「剥製のシロクマが生きているように撮れるのなら、蝋人形も生きているように撮れるだろう」。ロンドンのマダム・タッソー蝋人形館で撮影されたシリーズです。
写真がレンズの前のイメージを写し撮るのと同様、蝋人形もまた、本来は生身の人間からその時の容貌を石膏型として写しとります。写真も蝋人形も、時を止めて、時間を越えてもその像主と対面することができるのです。
肖像画のような照明で写された蝋人形は、ニセモノでありながらホンモノと見まごう真実性を表します。
左:《昭和天皇》 右:《ダイアナ、プリンセス・オブ・ウエールズ》 2点共通:1999年 ゼラチン・シルバー・プリント
〈放電場〉シリーズ 展示風景
暗室作業では微妙な温度差により静電気が帯電し、放電した火花が大切なフィルムを損傷してしまうこともあります。杉本はそれを逆手に取り、暗室内で人工的に放電を発生させ、その小さな雷のような光跡をとらえました。
〈Opticks〉シリーズ 展示風景
17世紀にニュートンが試みたプリズムによる分光実験を再現し、光の色彩を観測したシリーズです。
左から《Opticks》075、《Opticks》066、《Opticks》027 (3点共通)2018年 発色現像方式印画
〈CAMERA MAN〉
《CAMERA MAN》 2026年 シャッター機構を組み込んだ眼鏡 プロトタイプ、制作協力 JINS、SIGMA
特別出品
《光学硝子五輪塔 335 ノルウェー海、ベステローデン諸島》2011 / 1990 光学ガラス、黒白フィルム
当会場とは別に、所蔵品ギャラリー3階「MOMATコレクション」において、当館所蔵の杉本作品全点に加え、制作の秘密を明かす未公開資料「スギモトノート」をサテライト展示しています。ページをめくって見られるように、レプリカも置かれています。
スギモトノート 1980年代後半
※記事の中の写真には一部「MOMATコレクション」にて展示の作品も含んでいます。
「杉本博司 絶滅写真」開催概要
開催会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
開催期間:2026年6月16日(火)~9月13日(日)
休館日:月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火)
開館時間:10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00) 入館は閉館の30分前まで
観覧料金:一般2,300円 大学生1,200円 高校生700円 中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。(一般以外は要証明)
※本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)も観覧できます
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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使用カメラ:Canon PowerShot G7 X Mark II 8.8-36.8 mm ( 24-100 mm )